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netsuzou
キラー素顔捏造+小話
前にも1度やらかしましたが、顔に疾患のあるキラーです。若干エグいので苦手な方はお避け下さい。
大丈夫な方はつづきからどうぞ。
全く気にならないわけではなかった。
顔を隠す者は数居れど、五感の性能に支障をきたしかねない程全体を覆う者は稀だ。視界は小さな穿孔のみ、聴覚も遮られている上、呼吸も万全とは言えないだろう。メリットと呼ばれるものは何一つ無いように思えた。
そこまで顔を晒さない理由は、邂逅から現在に至る年月、仮面の記憶しかないという事実から察しがついていた。誰しも触れられたくない領域はある。ただ、その場所が可視であることは不幸だ。
たまに新入りが日常生活への差し障りについて問うが、特に気分を害した風もなく慣れていると返す。仮面を被ったままの日々に慣れている。仮面を訝しがられることにも慣れている。そんなキラーに慣れてしまった。
いっそ出会った頃に戻って、何の衒いもなく聞けたならばと思う。
けれどもし聞いたとして、その先の未来でキラーは己と共に航海をしているだろうか。
金具が擦れ合う音がする。やがて、机の上に見慣れた顔が置かれた。
それは、正視に耐えうるものではなかった。
戦場で、己の手で、惨たらしく傷つけられた人間は散々目にしてきたにも関わらず、キッドの心臓は抉られるように痛んだ。
そぎ落とされた鼻は髑髏のような鼻腔を晒し、無数に走る刃傷は引き攣れて表情を歪ませていた。
「……口蓋裂と左目の腫瘍は、元々だ」
数多の傷に紛れて、それらは最早些細とも言える疾患であった。痛みの森に隠された、いびつな木々だった。
偶然というには、傷痕はあまりに顔面に集中していた。
「何故、今なんだ」
キッドは殊更に言葉を選んだ。
「最初で最後の我儘だ、聞いてくれ」
キラーは絞り出すように呟いた。仕草や語調でおおよそ感情が読めていたと思ったのは、思い上がりだったかもしれない。初めて見る顔の、初めて見る表情の複雑さは筆舌に尽くしがたいものだった。
「少し、請け負ってくれないか」
傷だらけの男は、罪を明かすかのように言葉を綴る。
「情けないが……おれは隠していくことに疲れた。この気味の悪い顔を晒すのは怖かった。だが、ずっと顔を見ぜずにいて、キッドを信用していないのではないかと思われるのはもっと嫌だった」
「おれは、お前を誰より信用している。だから」
キッドは最後まで喋らせなかった。
「バカ野郎!抱えてんのが辛ェなら何で早く言わねぇ!」
衝動的に伸ばした腕で、俯いていたキラーの頭を掴んだ。そのまま顔を上げさせると、大きさの異なる二つの眼が、驚きに見開かれていた。
「請け負うも何もねぇよ!右腕の人生も背負えねェで海賊王になれるか!」
「キッド」
キラーはキッドの肩に手を置いた。
「泣くな、キッド……」
「バカだてめェは……何が少しだ」
………
怒ったり哀しかったり嬉しかったりごちゃまぜなキッド