<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<rss version="2.0"
	xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/"
	xmlns:wfw="http://wellformedweb.org/CommentAPI/"
	xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"
	xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom"
	xmlns:sy="http://purl.org/rss/1.0/modules/syndication/"
	xmlns:slash="http://purl.org/rss/1.0/modules/slash/"
	>

<channel>
	<title>ラクガガ &#187; SS</title>
	<atom:link href="http://rakugaga.wwww.jp/?cat=5&#038;feed=rss2" rel="self" type="application/rss+xml" />
	<link>http://rakugaga.wwww.jp</link>
	<description>KID &#38; KILLER Fansite</description>
	<lastBuildDate>Tue, 13 Nov 2018 12:48:59 +0000</lastBuildDate>
	<language>ja</language>
		<sy:updatePeriod>hourly</sy:updatePeriod>
		<sy:updateFrequency>1</sy:updateFrequency>
	<generator>https://wordpress.org/?v=3.8.41</generator>
	<item>
		<title>他人の旗</title>
		<link>http://rakugaga.wwww.jp/?p=1318</link>
		<comments>http://rakugaga.wwww.jp/?p=1318#comments</comments>
		<pubDate>Wed, 26 Mar 2014 03:15:49 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[エビコ]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[BLOG]]></category>
		<category><![CDATA[SS]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://rakugaga.wwww.jp/?p=1318</guid>
		<description><![CDATA[珍しくキッド視点からの小話。 持たざる者への素朴な疑問。 ※ 時折キッドは疑問に思うことがあった。 いわゆる「普通の人間」は一体何を考えて生きているのか。 外の世界に飛び出して知ったのは、誰しもが己を主人公にしたがるわけ [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>珍しくキッド視点からの小話。<br />
 持たざる者への素朴な疑問。</p>
<p></p>
<p>※<br />
 時折キッドは疑問に思うことがあった。</p>
<p></p>
<p> いわゆる「普通の人間」は一体何を考えて生きているのか。<br />
 外の世界に飛び出して知ったのは、誰しもが己を主人公にしたがるわけではないということだ。</p>
<p></p>
<p> 自分の人生なのに自分が中心にいないのはおかしくはないか。<br />
 まだ堅気の世界に生きる一般庶民が己を脇に据えるのならばわかる。しかしこの大海賊時代にあって、海の荒くれ者ですらちんけな破壊と略奪と彼らにとっては相応の安酒を飲み下すことに安寧を見いだしているのはどういう了見だ。<br />
 捕まることなく上を目指すことなくできるだけ楽に稼ぎたいという欲望がキッドには理解できなかった。それはもはやただの卑劣な職業だ。</p>
<p></p>
<p> しかし時々自分と同じにおいを感じる者に出会うことがある。それは大概目の前にいるのに遥か遠くを見つめていて、自分の掲げる旗に絶対的な自信を持つ、船長という人種であった。</p>
<p> そういう奴に出会うと面白い。飲まれそうになればなるほど前に立ちはだかりたくなる。そして強者の脇を固める奴らの眼に心地よい圧力を感じる。船長の強さへ懸ける信頼。仲間から掛けられたプレッシャーが船長から発されるプレッシャーを強靭なものにする。</p>
<p></p>
<p> ここでまたひとつ疑問が生まれる。<br />
 人の野望が自分の野望になりうるか？キッドにとっては愚問だ。</p>
<p></p>
<p> なるわけがない。</p>
<p></p>
<p> 仲間達からの信頼を下らないものと吐き捨てるつもりは毛頭ない。ただ他人の旗を死ぬ気で支えたいという心境がわからないだけだ。</p>
<p></p>
<p> そういえばそんな奇矯な男が隣にいたのであった。男はキッドの望みを叶えたいという。そのためにはいかなる尽力も惜しまないという。</p>
<p></p>
<p>「おれと会う前は何のために生きてた？」<br />
「何も考えてなかったんじゃないか」</p>
<p> キラーはあからさまにがっかりした表情を隠さないキッドから顔をそらし、少し強くなりたかったのかもしれない、と付け加えた。</p>
<p></p>
<p> 実際のところ彼らは南の海で出会う前から互いに名前を把握している程度には存在感を有していたので、少しというには語弊があった。</p>
<p></p>
<p>「キッド、お前のように明確な目標を掲げて生きている人間は実は結構珍しい」<br />
「そんな気はしてた。芯のねェ奴らばっかりだ」<br />
「目標を突き通そうとする奴は我の強い馬鹿野郎と見なされるからな」</p>
<p></p>
<p> 空気のひび割れる音がした。まったく介さずキラーは続ける。</p>
<p></p>
<p>「だが強いということに憧れる馬鹿も山ほどいて」</p>
<p></p>
<p>「馬鹿を助けてやりたいって馬鹿も多い」<br />
「……お前少しキレただろ」<br />
「お前もな」</p>
<p> キラーが子どもに対するような笑い方をした気配を感じてキッドの眉間に皺が寄った。</p>
<p></p>
<p>「現実、おれはお前に比べたら取るに足りない人間だよ」<br />
「下げんな。おれの海賊団にそんな奴はいねェ」<br />
「キッドがそういうことを口に出すとは思わなかった」</p>
<p></p>
<p> キッドは完全に無表情になった。キラーは仮面の下で必死に笑顔を噛み殺す努力をした。バレたら爆発してしまう。</p>
<p></p>
<p>「だがまあそういうことだ。おれもお前の強さの一部でいたいんだ」</p>
<p></p>
<p> そういえばおれの野望ってのは海賊団の野望に吸収されてやがったな、とキッドは苦い顔をした。</p>
<p></p>
<p>  負けるかよ。</p>
<p></p>
]]></content:encoded>
			<wfw:commentRss>http://rakugaga.wwww.jp/?feed=rss2&#038;p=1318</wfw:commentRss>
		<slash:comments>0</slash:comments>
		</item>
		<item>
		<title>十年後のキッドとキラー(リクエスト企画)</title>
		<link>http://rakugaga.wwww.jp/?p=1245</link>
		<comments>http://rakugaga.wwww.jp/?p=1245#comments</comments>
		<pubDate>Fri, 24 Jan 2014 16:14:15 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[エビコ]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[BLOG]]></category>
		<category><![CDATA[SS]]></category>
		<category><![CDATA[ラクガキ]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://rakugaga.wwww.jp/?p=1245</guid>
		<description><![CDATA[　先日行ったリクエスト企画のイラストができました！ 　おるごんさんよりリクエスト頂いた「十年後のキッドとキラー」。三十三歳キッドと三十七歳キラーです。 　キッドは三十三歳ということで手放しで若いとは言いきれないけど若造の [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>　先日行ったリクエスト企画のイラストができました！<br />
　おるごんさんよりリクエスト頂いた「十年後のキッドとキラー」。三十三歳キッドと三十七歳キラーです。</p>
<p></p>
<p><a href="http://rakugaga.wwww.jp/wp-content/uploads/2014/01/kdkl100.jpg"><img src="http://rakugaga.wwww.jp/wp-content/uploads/2014/01/kdkl100.jpg" alt="kdkl100" width="600" height="900" class="alignnone size-full wp-image-1246" /></a></p>
<p>　キッドは三十三歳ということで手放しで若いとは言いきれないけど若造の範疇なのであんまり落ち着いていません。服装のセンスがアレなのは見逃して頂きたいんですが、十年後どこが一番変化するかといえば義手だと思うんですよね。パワーアップはもちろんのこと外装に凝ってたら楽しい。ペイントしたり模様を彫ったり複雑な機構にしたり。</p>
<p></p>
<p>　キッドに隠れてほとんど見えないキラーの全身がこちらです。</p>
<p></p>
<p><a href="http://rakugaga.wwww.jp/wp-content/uploads/2014/01/killer76.jpg"><img src="http://rakugaga.wwww.jp/wp-content/uploads/2014/01/killer76.jpg" alt="killer76" width="472" height="600" class="alignnone size-full wp-image-1247" /></a></p>
<p>　二年後の時点でやや髪が短くなっていたので十年後は更に短くしてみました。二年後の場合は大怪我を負った際に髪の毛も持っていかれてしまったんだろうなあと思うんですが、十年後が短いのは願掛けの終了という理由付けをしています。こっそりキッドが海賊王になるまで髪を切らないという願掛けをしていたけど、その目標が消失したためにばっさり切ってしまったみたいな。まあ願掛けといってもそこまで重々しいものじゃなくて髪を切らない言い訳としての要素が強かったんだけど切ったら何となくすっきりしたキラー。<br />
　あとアラフォーに差し掛かると髪の健康状態が気になってくるかなあと思いまして。仮面被ってるからハゲてもごまかせるだろうけど、あの毛量だと生え際に相当負担掛かってるはず。<br />
　服装についてはシャツ×ベストが好きなので採用しましたが、ややキラーのドレスコードを外してしまった感が否めない。中世か？</p>
<p></p>
<p>　ちなみに十年後も元気に海賊団を続けている設定で描きました。</p>
<p></p>
<p>　十年の間にほぼ間違いなく麦わら一味がワンピースを手に入れるでしょう。すると目的を同じくするキッド海賊団はどうなってしまうのか。そこをまず考えました。<br />
　キッドはワンピースそのものが欲しいのか最強の座が欲しいのか、海賊団存続のポイントはそこですよね。<br />
　ワンピースを見つけること≒海賊王になること、と考えればワンピースはともかく海賊王になることは諦めないかもしれません。ルフィを倒せば海賊王になれるかといえば違うだろうけど、例えば四皇の一角に納まったからといって満足するタマとも思えません。大海賊時代における成功の頂点はやはり海賊王なはず。<br />
　そうすると彼らが航海を続ける理由はワンピースゲット→最強を目指すに自然と軌道修正できる気がします。</p>
<p></p>
<p>　解散している場合も考えました。考えましたが、考えれば考えるほどバラバラになって何かすることあるのかなと不安になってきます。船員レベルならまあ他の船に乗ったり陸地で強面の仕事をやったり道はあるでしょう。キラーは何となく賞金稼ぎでもしてふらふら生きていられそうな気がしますが、キッドはほんとキャプテンだからこそキッドというかワンピースっていう特大の目標がなかったらどうやって生きていくんだろう。なまじ生命力が強そうなだけに、海賊団なき後そのギラギラに見合う生きる理由って何か見つけられるの？ほかの船長達も結構そういうところある。意外とワポル様的な社長業への転身もあるかもしれないけど。</p>
<p></p>
<p>　キッド達がワンピースを手に入れられないのは既定路線ですが、その場合夢を失ってからの人生が長過ぎてちょっと空恐ろしくなってきます。普通に働いたり家庭を持ったりという方向にも行かないだろうし、アウトローの人生に安寧という選択肢はないのだと思い知らされますね。</p>
<p>
　ただ私は彼らのそういう全く保険のない道を己の意思で選んでいるところが潔くて好きなのです。</p>
<p>　願わくば死ぬまで最強を目指して駆け抜けていってほしいものです。</p>
<p></p>
<p>　十年後を考えるのが楽しすぎて無駄に語ってしまい申し訳ありませんが、さらに付け合わせの小話もご用意しております。</p>
<p></p>
<p>※</p>
<p></p>
<p>　本当は危惧していた。己の船長が小市民の幸福、帰るべき場所、果ては半身さえ振り捨ててまで追い求めた頂きが、他の誰かに踏破される日のことを。</p>
<p></p>
<p>　キラーは振り返る。</p>
<p></p>
<p>　何しろ用意された椅子はたったひとつで、その一脚を巡る争いに新たな時代の名が冠される程だったのだ。<br />
　いくら戦力を増してもきりがなかった。最悪の世代と呼び慣らされたところでこの海の頂点には届く気がしなかった。一度たりとも口にはしなかったが、ひとつなぎの秘宝に近づく手段を練る間も、常に一縷の諦念が染み付いていた。<br />
　ただ、彼の船長であるユースタス・”キャプテン”・キッドは諦めや不安の類いから恐ろしく縁遠い男だった。それゆえキラーはキッドの背に無窮の光を見た。</p>
<p></p>
<p>　運命の日は実にあっさりと訪れた。今でもはっきりと思い出せる。</p>
<p>
　血の通わない機械の指が、手にした新聞を穿つほど握りしめられた。その新聞を渡したのはキラーだった。いずれ知る事実ならひた隠しにも大仰にしたくもなかった。ただ指先はひどく冷えていた。船員達は息の仕方を忘れたように押し黙り船長の動向を窺っていた。</p>
<p></p>
<p>「麦わらの野郎、やりやがった！」</p>
<p></p>
<p>　哄笑だった。キッドは口の端を裂いて笑っていた。それは実に無邪気な笑いで、仲間たちが未だかつて見たことのない種類の表情だった。ひとしきり声を上げ終えると、静寂が訪れた。今度こそ恐ろしい光景が広がるのではないかと思い、みな身を固くした。</p>
<p></p>
<p>「また新しい時代が来るぜ！」</p>
<p></p>
<p>………</p>
<p></p>
<p>「なァキッド」</p>
<p></p>
<p>　呼ばれた男は、十年来の右腕に向かって首を捻った。</p>
<p></p>
<p>「あの時おれはな」</p>
<p></p>
<p>　言いながら数歩進んで横に並ぶ。どの時だとは問われない。</p>
<p></p>
<p>「お前がヤケを起こすんじゃないかと」<br />
「何年おれの船に乗ってんだよ」</p>
<p></p>
<p>　往年よりやや角の取れた輪郭にあきれたような笑みが浮かぶ。長年近くにいてもまだ知らない表情があることに気づく。それでも眦は変わらず研ぎ澄まされた刃物を思わせた。</p>
<p></p>
<p>「おれは前しか見ねェ」</p>
<p></p>
<p>　し、見えねェ、と付け加えられた。</p>
<p></p>
<p>　ひとつなぎの秘宝は通過点であり終着点ではない。昔から再三繰り返していたこととはいえ、流石にすぐさま舵を切り替えるとは予想だにしなかったのだ。つくづく恐ろしい男だとキラーは羨望混じりに思った。<br />
　だが、実のところキッドが格好つけたがりなことは知っている。部下の前で悔しさを滲ませたくなかったのだということも。</p>
<p></p>
<p>「後ろにお前らがいるからな」</p>
<p></p>
<p>　内心を見透かされたような気がしてキラーは苦笑したが、キッドの言わんとする意味を読み誤ったことに気づいて面映げに顎髭へ手をやった。</p>
<p></p>
<p>「そうだな、キャプテン」</p>
<p></p>
<p>※</p>
<p></p>
<p>　リクエスト頂きありがとうございました！</p>
]]></content:encoded>
			<wfw:commentRss>http://rakugaga.wwww.jp/?feed=rss2&#038;p=1245</wfw:commentRss>
		<slash:comments>0</slash:comments>
		</item>
		<item>
		<title>太陽に伏す</title>
		<link>http://rakugaga.wwww.jp/?p=237</link>
		<comments>http://rakugaga.wwww.jp/?p=237#comments</comments>
		<pubDate>Sat, 27 Apr 2013 00:32:06 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[エビコ]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[BLOG]]></category>
		<category><![CDATA[SS]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://rakugaga.wwww.jp/?p=237</guid>
		<description><![CDATA[下の記事に載せたイラストの付け合わせ的な短い話。 ※ 　太陽に伏す　　　 　何が違うのだろう、とキラーは思った。 　マストの上で見渡す青も、地上で見上げる青も、色彩に違いはない。 　小高い丘の、背の低い熱帯植物が群生する [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>下の記事に載せたイラストの付け合わせ的な短い話。</p>
<p>※</p>
<p> <haiku>　太陽に伏す　　</haiku>　</p>
<p></p>
<p>　何が違うのだろう、とキラーは思った。</p>
<p></p>
<p>　マストの上で見渡す青も、地上で見上げる青も、色彩に違いはない。</p>
<p></p>
<p>　小高い丘の、背の低い熱帯植物が群生する地帯。木陰と言うにはあまりに心もとない空間に腰を下ろし、見上げた空はやはり青い。<br />
　見上げずとも空と海と港町は一望できるのだが、人は太陽を仰がずにはいられない。ヒマワリか何かのようだと思う。<br />
　時折湿度をまとった青臭い風が吹き抜けて、ああ違うのは色じゃなくて空気かと気づく。</p>
<p></p>
<p>　ひとりでいると詮無いことばかり考えてしまうものだ。しかしながらその時間は一団に属す身には貴重なもので、孤独を愛する性はこうした無駄で満たされるのだった。<br />
　ずっと海の上で箱に詰められていれば、どんな寂しがりだろうと外へ飛び出したくなる。錨を下ろすが早いか街へ駆け出していく船員達の姿に、キラーはひとりになる大義名分を得る。</p>
<p></p>
<p>　今日からしばらくは次の島へ向かうためのログを溜めなければならない。その間決まっていることといえば、簡単な船のメンテナンスと火薬や食材の補充、最終日に船へ戻ることくらいだ。あとは仲間が、主に船長が乱闘騒ぎを起こすことも計算に入れねばならない。事によっては今見えている風景が消えてなくなるかもしれない。</p>
<p></p>
<p>　柔らかい葉の茂る木に背中を預ける。日暮れまでひと眠りしようか、そう考え至った時だった。</p>
<p></p>
<p>　草を踏む音、衣擦れの音。誰かが丘を登ってくる。</p>
<p></p>
<p>　見知った気配だということは早くに気づいた。</p>
<p></p>
<p>「……迷子か？」<br />
「殴られてェか」</p>
<p></p>
<p>　いいやと笑いを含んだ声で返せば、キッドは苛立たしげに鼻を鳴らした。至っていつも通りの態度だ。<br />
　隣に腰掛けるでもなく、目を合わせるでもなく、丘からの眺めを確かめている。そしてあらかた周縁を見尽くした後太陽を見上げたので、気取られないように仮面の中で笑った。</p>
<p></p>
<p>「高いところ好きだな、お前」<br />
「そうかもな」</p>
<p></p>
<p>　急に揶揄するような口調になったので、煙と何とかはと言い出すのかと思えば、</p>
<p></p>
<p>「きっとここにいると思ったぜ」</p>
<p></p>
<p>　と自信に満ちた横顔で宣言された。</p>
<p></p>
<p>「いつも高いところにいるよな。ワンパターンなんだよ」</p>
<p></p>
<p>　キラーは彼の船長が自分を探していたことに気づいた。<br />
　それは少々の驚きを呼び起こす事実だった。</p>
<p></p>
<p>「なにもこんな時まで」<br />
「あ？」<br />
「いや、毎日顔を突き合わせてるのによく飽きないなと思った」</p>
<p></p>
<p>　ああ、とキッドはつぶやき、キラーはろくでもない言い回しをしてしまったと内心頭を抱えた。<br />
　嫌なわけじゃない、と取り繕おうとしたがキッドが先に口を開いた。</p>
<p></p>
<p>「キラーがいねェと違和感がある」</p>
<p></p>
<p>　何のてらいもなく言うので、どう返したものか測りかねた。</p>
<p>
　<br />
　光栄だと言ったらきっと不機嫌になるだろう。感謝、親愛、温かさ。それらは彼の忌避してやまないものだ。</p>
<p></p>
<p>「……よさそうな酒場がある。ここから見えた」</p>
<p></p>
<p>　勢いをつけて立ち上がる。キッドはこちらを一瞥するでもなく、白熱に照らされる世界を見つめていた。</p>
<p></p>
<p>　少し後ろに立ち、改めて景色を一望する。<br />
　そうだ、空気だ。空気が違う。</p>
<p></p>
<p>　キッドがいる世界では、空も海も全ての青が彼にひれ伏す。</p>
<p>　誰も彼も当たり前のように太陽を見上げるのだ。</p>
<p></p>
]]></content:encoded>
			<wfw:commentRss>http://rakugaga.wwww.jp/?feed=rss2&#038;p=237</wfw:commentRss>
		<slash:comments>0</slash:comments>
		</item>
		<item>
		<title>炉心</title>
		<link>http://rakugaga.wwww.jp/?p=177</link>
		<comments>http://rakugaga.wwww.jp/?p=177#comments</comments>
		<pubDate>Fri, 13 Jul 2012 13:28:44 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[エビコ]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[BLOG]]></category>
		<category><![CDATA[SS]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://rakugaga.wwww.jp/?p=177</guid>
		<description><![CDATA[金属に侵食されるキッドって素敵だなあ鉄男だなあと思って衝動的に書いた小話。 　炉心　　　 　男は常に鉄屑を纏っていた。 　男の身には磁力を帯びる呪いが掛かっており、世にある金気を持つ物は凡そ彼に隷属した。その力はもっぱら [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>金属に侵食されるキッドって素敵だなあ鉄男だなあと思って衝動的に書いた小話。</p>
<p></p>
<p><haiku>　炉心　　</haiku>　</p>
<p></p>
<p>　男は常に鉄屑を纏っていた。</p>
<p></p>
<p>　男の身には磁力を帯びる呪いが掛かっており、世にある金気を持つ物は凡そ彼に隷属した。その力はもっぱら他者を捩じ伏せるために振るわれた。男の周囲には強い錆のにおいが漂っているのだが、それが鉄屑から立ちのぼるものなのか、誰かの血を浴びたことによるものなのかは判別できなかった。</p>
<p></p>
<p>　長きに渡る旅の中で、男は左腕を失った。仲間は驚き嘆いたが、本人にとってはさほどのことでもないらしかった。それから男は代替として、左腕を模した鉄屑を繋いだ。無数のねじ、錆びた釘、歯車、折れた剣、鎖、ばね、スクリュー、あらゆる金属が野放図に絡みついたいびつな腕だ。</p>
<p></p>
<p>｢まだ傷口は塞がらないのか｣<br />
｢じきに治るだろ｣</p>
<p></p>
<p>　血生臭さを振り撒きながら、男は偽の腕を誇示してみせた。金属片の隙間から、鮮烈な赤に染まった包帯が見えた。<br />
　包帯さえなければ、遠慮なく肉の奥へ食い込んでいきそうな鈍色の群。己とて刃物を振るう身ではあるが、両手で従えるのがせいぜいだ。男は集団を統べるための器を備えているが、無数の金属を従えているのは悪魔の力である。人の身に余る力がいつか反乱を企てないとは限らない。<br />
　鉄屑のぶつかりあう音は、謀り言を囁いているかのようで不快に響く。これまではただ肉体を覆うだけだったものが体の一部となっている。それは付け入る隙を晒しているようにも思えた。</p>
<p></p>
<p>｢……お前の片腕をあまり信用しない方がいい｣<br />
｢お前を？｣</p>
<p></p>
<p>　男は笑い混じりで返してきたが、己の意図した意味が現実的ではないことを思い、黙って頷いた。男は今度こそ声をあげて笑った。</p>
<p></p>
<p>　それは、現実的ではなかったとしても起こり得ないことではなかった。</p>
<p></p>
<p>　取るに足らない敵との小競り合いを終え、腰に提げた鞘に武器を収める。<br />
男も普段通り、磁力を緩めて武器を解放しようとしていた。砂埃を払いつつ、男に声を掛けようとした瞬間、鼓膜を突き破るような金属音が響いた。それは鉄屑が上げる鬨の声のようだった。<br />
　男の表情を確認するかしないかの間に、その顔を鉄屑が覆った。超自然的な動きで、金属はあるじに襲い掛かっていた。</p>
<p></p>
<p>｢キッド！｣</p>
<p></p>
<p>　すぐさま駆け寄り引き剥がそうとするが、その数はあまりに膨大だった。侵食はゆるやかとも言える速度であったのだが、あまりに強く肉に噛みついていたため、剥がすのは容易ではなかった。甲虫の如く這いずる鉄屑たちは、皮膚だの肉だのを突き破って心臓をのみ目指していた。</p>
<p></p>
<p>　鉄屑は悲鳴のような音を立てて男を喰らい尽くそうとしていた。ただ、その合間に漏れるわずかな呼吸音がかろうじて生命を保証していた。けれども、その呼吸さえも怒濤の進撃の前についえようとしていた。</p>
<p></p>
<p>　不意に、鈍色の滴が地面を跳ねた。追って鉄屑たちは形を失いどろどろと垂れ落ちだした。一呼吸置いて、金属の塊がひれ伏すように地に沈んだ。</p>
<p></p>
<p>　男の顔には、粒々した汗に紛れてうっすらと笑みが浮かんでいた。</p>
<p></p>
<p>｢みんなおれの血だ｣</p>
<p></p>
<p>　その瞳は炉心の如く赤く煮えたぎっていた。</p>
<p></p>
]]></content:encoded>
			<wfw:commentRss>http://rakugaga.wwww.jp/?feed=rss2&#038;p=177</wfw:commentRss>
		<slash:comments>0</slash:comments>
		</item>
		<item>
		<title>遠浅（ss）</title>
		<link>http://rakugaga.wwww.jp/?p=128</link>
		<comments>http://rakugaga.wwww.jp/?p=128#comments</comments>
		<pubDate>Sun, 11 Sep 2011 03:14:04 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[エビコ]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[BLOG]]></category>
		<category><![CDATA[SS]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://rakugaga.wwww.jp/?p=128</guid>
		<description><![CDATA[　近日中にアップするとか言っといて、とんだオオカミ少年でした。ほぼ一月経ってるというね。 　数十年後のキッドとキラーの話。腐向けといえば腐向け。流血表現もあります。薄暗い話です。 　遠浅　　 　半世紀近くに渡る航海の始ま [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p><img src="http://file.rakugaga.blog.shinobi.jp/killer39.jpg" alt="" /><br />
　近日中にアップするとか言っといて、とんだオオカミ少年でした。ほぼ一月経ってるというね。</p>
<p>　数十年後のキッドとキラーの話。腐向けといえば腐向け。流血表現もあります。薄暗い話です。</p>
<p></p>
<p><haiku>　遠浅　　</haiku></p>
<p></p>
<p>　半世紀近くに渡る航海の始まりはいつだったか。それはもはや遥か遠き日のことだった。見知らぬ島を発見することが珍しくなるほどの年月、海は常に傍らにあった。</p>
<p></p>
<p>　今、キラーの眼前には、ごく小さな島がある。猫の額ほどの浜には、変哲もない南国の木々が静かに凪いでいる。恐らく早春の夏島だと思われた。大海賊時代には、多くの猛者達が海へ出た。海面にほんの少し突き出た岩礁ですら、誰かが命名していることだろう。この島にも大層な名が付いているに違いない。</p>
<p></p>
<p>｢錨を降ろせ！｣</p>
<p></p>
<p>　慣れ親しんだ船長の声に、甲板中から船員達の相槌が返る。<br />
　全盛期と比較すれば、船は一回り以上小さい。空室の目立つ巨船など虚しいだけだとキッドは言い、馴染んだ船をあっけなく解体して、造り直させた。古参の面子が十数人もいれば、航行するには事足りる大きさだ。</p>
<p></p>
<p>　船を海岸に固定し、めいめい島に降り立つ。久々に踏みしめる揺るぎない陸地に、長い影が落ちる。もうすぐ日が暮れるだろう。キラーは、とりあえず島を一周するべく歩き出した。立ち寄る島の風土は把握しておきたい。それは、元来集団行動を厭うキラーが孤独を楽しむ口実でもあった。<br />
　時折、角の丸くなったガラス片や、船の残骸らしき端材を踏み付ける。その度、さりさりと乾いた音が鳴る。人間の残滓は感じられるが、気配は無い。風の温みだけが、肌にまとわりついていた。<br />
　島の輪郭をなぞるように海岸沿いを歩くと、ほんの10分程度で、着岸地点から真反対の砂浜に辿り着いた。</p>
<p></p>
<p>　水平線が、見知っているより随分と低い位置に引かれている。西日の眩しく乱反射する波飛沫に惑わされて見え辛いが、透明度の高い潮の下、延々と続く砂地が確認できた。遠浅のようだ。目が痛むほど輝く海面とは対照的に、波音はささやかなものだ。しかし、寄せては返す波は、確かに膨大な過去を絶え間なく現在へ還元している。人の経た航海など、　自然の流れの前では微々たるものだ、とふと思う。足元に転がっている白骨のごとき流木も、自分など及びもつかない年月を過ごしてここに在るのだろう。</p>
<p></p>
<p>　適当な大きさの流木に腰掛ける。安置しようとした手を、突き出た枝がかすめた。反射的に掌を確認する。傷は付いていない。裂傷のような皺があるだけだ。痩せたような気はしないのに、指の皮は骨に纏わり付き幾重もの溝を刻んでいる。拳を握り込むと、骨と肉が静かに軋んだ。</p>
<p></p>
<p>　正直なところ、ここまで命を永らえるとは思いもよらなかった。命を削るように、血潮を絞り出すように、駆けてきたのだ。ゴールテープを切った後も、止まることのできない走者のように。<br />
　キッドの船に乗る者は、誰も彼も危うい生き方をしていた。道程で命を落とす者も数え切れないほどいた。それでも誰一人振り返りはしなかった。立ち塞がる者を殺す覚悟は、殺される覚悟と表裏一体だ。その覚悟は、感傷と縁遠いものである。涙を一滴こぼすより、相対する者の心臓に刃を突き立てる方が、弔いに相応しい。そのはずだった。けれど、今は事あるごとに振り返ってしまう。誰も失っていないか。誰も血を流していないか。</p>
<p></p>
<p>　いつから自分はこれほど弱くなってしまったのだろう。年月と共に積み重なっていく仲間の死を辛いと考えてしまうことこそ、己の老いを自覚する行為にほかならなかった。</p>
<p></p>
<p>　いよいよ太陽は海に吸い込まれ始め、不快な程まばゆさを増す。キラーは、直視できず顔を伏せた。目をつむっても、仮面の穴から光は侵食し、白く瞼裏を焼いた。<br />
　ふいに、キラーが歩いてきた方角から、砂を分ける気配がした。砂音はゆっくりと近づいてくる。キラーは、特に身じろぎもせずそれを迎えた。</p>
<p></p>
<p>｢ここは、あの島の浜に似てねェか｣</p>
<p></p>
<p>　傍らに立ち止まったキッドが言う。あの島、とはキッドとキラーが生まれ育った島のことだ。決して故郷とは口にしない。あれは南の海に浮かぶ、つまらない島だった。何もないので、もっぱらの娯楽は派手に血の噴き出す暴力だった。そんな喧騒に満ちた島も、しかし海辺は静寂が支配していた。太陽に色を奪われた漂流物は、亡骸のように無口だった。</p>
<p></p>
<p>｢……少し｣</p>
<p></p>
<p>　キラーの肩口を、厚い毛皮の袖先がかすめた。しばらく視界の端に暗褐色の革靴がちらついていたが、やがてくぐもった靴音しか聞こえなくなった。だが、遠ざかっていくその音が急に湿り気を帯びたので、キラーは顔を上げた。いつの間にか、キッドの後ろ姿がひどく遠くなっていた。</p>
<p></p>
<p>｢どうやってそこまで行った｣</p>
<p></p>
<p>　革靴がぬるりと潮を纏って光沢を放っている。悪魔の実の能力者は、海に嫌われる。海水に直接触れているわけではないが、多少なり干渉を受けるはずだ。</p>
<p></p>
<p>｢この程度の浅さなら、どうってことねえよ｣</p>
<p></p>
<p>　キッドは振り向きもせず、更に沖の方へ足を運ぶ。しばらく波間を掻き分ける音が騒がしく響いた。水平線へ落下しようとする夕陽が、逆立った頭髪を赤銅色に揺らす。<br />
　キラーは無性に不安に駆られた。</p>
<p></p>
<p>｢キッド！｣<br />
｢うるせェ野郎だな。お前はおれの親か？｣</p>
<p></p>
<p>　凄むかのような口調だったが、語気は愉快げな色を含んでいた。</p>
<p></p>
<p>｢……お前が“キッド”である限りはな｣<br />
｢ハハ、道理でどこまでもついて来るはずだ｣</p>
<p></p>
<p>　転んでくれるなよ、と声を掛けると、親指で首を切る仕草を返された。名の通り、いつまでも少年のごとき奔放な振る舞いを見せる男だ。キッドを慕う者は、彼の持つそういった自由さに惹かれた。<br />
 自由。人はそれを渇望し、規定された枠を叩く。しかし、大方その行為は、自分の望む分だけ枠を広げているに過ぎない。内心は、枠に守られていたいという保身が透けて見える。翻って、リスクを度外視し、何にも囚われないキッドの不遜さは、無法者達にはいたく痛快に映るのだった。それはキラーにとっても同じだった。</p>
<p></p>
<p>｢キッド？｣</p>
<p></p>
<p>　急に無口になったキッドに声を掛けたが、微動だにしない。しばし、居心地の悪い間が生じた。ぬるい潮風が、コートを奇妙な生き物のように蠢かせる。しばらくして、キッドは緩慢な動作でキラーの方を振り返った。逆光で表情がよく見えないにも関わらず、間違いなく、口の端が裂ける程の凄絶な笑みを浮かべていることがわかった。</p>
<p></p>
<p>｢抜けよ｣</p>
<p></p>
<p>　ざわざわと肌が粟立つ。辺りに埋もれた闘争の残骸が、砂粒を振り落としながら宙を舞う。それらは瞬く間にキッドの右半身を覆い、いびつな巨腕へと姿を変えた。大味ながらも手の形を模した屑鉄は、挑発するかのように、こちらを小招く動きをしてみせた。</p>
<p></p>
<p>｢何を……｣<br />
｢久し振りに殺り合おうぜ｣</p>
<p></p>
<p>　これまでも、戯れのような手合わせは数えきれないほど行ってきたが、今日は何かが違うように思えた。キッドが一歩距離を詰めてきたので、反射的に腰に提げた曲刀へ手を掛ける。その挙動を認めたキッドは、喉の奥で低く笑った。<br />
　例え乗り気でなくても、殺気を滲ませた者と相対する時、キラーが武器を持たないことなどない。金属同士がぶつかり合う音が鋭く響いた。瞬時に背後へ飛び退いて、距離をとる。</p>
<p></p>
<p>｢つれねェな｣</p>
<p></p>
<p>　間髪入れず、海面を切り裂くような勢いで、無数の鉄塊がこちらへ放たれた。軌道を見切って避けるが、いくつか目測を見誤り、真っ赤な放物線が空に噴き上がる。</p>
<p></p>
<p>｢ハハハハ！手ェ抜いてんじゃねェよ馬鹿野郎！！｣</p>
<p></p>
<p>　痛みはすぐに闘争心へ置き換えられる。体に染み付いた反射だ。むしろスイッチとも言える。キラーは砂を蹴り、キッドの懐へ入り込もうと目論んだ。キッドは悪魔の実の特性上、遠距離からも攻撃が可能だ。キラーが対抗するには、敏捷性を活かして近接戦に持ち込むしかない。キッドもそのことを重々承知しているため、阻む術は持っている。小さな島の中を、鈍く、鋭く、重く、軽く、衝撃音が交差した。他の船員が聞き付けて止めに来ないのが不思議なほどだ。急所すれすれの斬撃を繰り出すほど、キッドは愉快そうに口の端を歪めた。昔なら、同じように高ぶれただろうか。今は攻撃の一手一手が慎重になっているのが、自分でもよくわかる。なるべく当てないようにとそればかりに神経を尖らせてしまい、まるで高揚感が得られない。<br />
　打ち合いのさなか、ふとキッドの顔から笑みが引いた。</p>
<p></p>
<p>｢何で、お前はまだこの海賊団にいるんだ｣</p>
<p></p>
<p>　キッドの有り余る衝動を新時代は歓迎したけれども、ぎらぎらとした野望は否が応にも目立った。出る杭を打とうとする者は多い。新星を叩き墜とさんとする力に抗っている間に、ひとつなぎの秘宝がかの麦わら一味によって発見されたと報じられた。<br />
　麦わら帽子の海賊が導き出した未来は、世界を鮮やかなものに変えたが、新たな時代は真昼の太陽のように健全なきらめきに満ちていた。居心地が悪い。地獄のような灼熱は耐えられるのに、温かくこちらを包むような空気の中では、呼吸もままならない。</p>
<p></p>
<p>｢もう何も手に入らねェのに｣</p>
<p></p>
<p>　何よりも、研ぎ澄まされた牙が磨耗していくのが恐ろしかった。</p>
<p></p>
<p>｢……おれは、お前と行くと決めたから｣</p>
<p></p>
<p>　キッドの表情が一瞬寂しげな子どものように揺れた。しかし、それは本当に刹那のことだった。</p>
<p></p>
<p>｢だからてめェはいつまでも半端なんだよ、キラー!!｣</p>
<p></p>
<p>　選んだ言葉は、暴風雨のごとき猛攻で返された。穴だらけになった砂浜に、次々と赤い滴りが吸い込まれていく。</p>
<p></p>
<p>｢お前のそれは、惰性でしかねえ。目的を失った船長の後を追って、何が得られる？何が望める？｣</p>
<p></p>
<p>　追い討ちをかけるように、鉄の腕が叩きつけられた。わずかにかすっただけで、吹き飛ばされそうな衝撃を受ける。ほんの少し仰け反った隙に、容赦なく連撃を注がれる。舞い上がる砂埃で、視界も満足に確保できない。</p>
<p></p>
<p>｢もう駄目だと、一度でも思わなかったか？｣</p>
<p></p>
<p>　遠のきかけた意識の中、キッドの声だけがやたら明瞭に聞こえた。キラーは、もはや視覚など頼らず声のする方へ駆けた。正面から飛んでくる鉄塊がいくつも身を切ったが、速度を緩めることはしなかった。その勢いを殺さず、水面を蹴る。</p>
<p></p>
<p>　そして、決して避けられない間合いへと、飛び込んだ。</p>
<p></p>
<p>｢おれは、お前の夢を死なせたくなかった｣</p>
<p></p>
<p>　噴き出したと思ったのは、夕陽の赤だった。</p>
<p></p>
<p>｢志半ばで、お前を……死なせたくなかったんだ｣</p>
<p></p>
<p>　キラーは独り、かそけく揺れる波間に立ちすくんでいた。夕映えを受けた潮が、血溜まりのように生ぬるく足元を濡らした。</p>
<p></p>
<p>　キラーがキッドに代わり船長を務めだして、どれほどの年月が経過しただろうか。皆が慕い、海賊王の器と信じていたユースタス・キッドはもういない。<br />
　死とは、いたく簡単なものだった。今まで屠ってきた余多の命と同じく、的確に急所を抉られれば、少し血を流しすぎれば、どんなに強い者でも死ぬのだ。すべてが一瞬で消え失せた。言葉さえ、表情さえ残されはしなかった。<br />
　船長亡き後、『キッド海賊団』の旗を掲げることに難色を示した者も少なくなかった。すぐ離反する者もいたが、実質的な副船長であるキラーの判断を待つ者が大半だった。</p>
<p></p>
<p>　結局キラーは航海を続けることを選んだ。ひとつなぎの秘宝を探すでもない、力を誇示するわけでもない、ただあてどなくさまようだけの旅だ。『キッド海賊団』の名を海に漂わせ続けることで、過去と化した男を、生かしたかったのだ。<br />
 その行為が、残された者の慰めに過ぎないと分かっていても。きっとあの男は、それを望まないと分かっていても。</p>
<p></p>
<p>　水平線が、太陽を飲み込んだ。世界を照らす光が薄れていく。</p>
<p></p>
<p>　キラーは、海中に没した太陽を、いつまでも見つめていた。</p>
<p></p>
]]></content:encoded>
			<wfw:commentRss>http://rakugaga.wwww.jp/?feed=rss2&#038;p=128</wfw:commentRss>
		<slash:comments>0</slash:comments>
		</item>
		<item>
		<title>技の名前を考える話</title>
		<link>http://rakugaga.wwww.jp/?p=46</link>
		<comments>http://rakugaga.wwww.jp/?p=46#comments</comments>
		<pubDate>Mon, 25 Jan 2010 08:36:03 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[エビコ]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[BLOG]]></category>
		<category><![CDATA[SS]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://rakugaga.wwww.jp/?p=46</guid>
		<description><![CDATA[　キッドとキラーが互いの技の名前を考える話を書きました。 　セリフのみでほんとに短い小ネタ。 ｢暇だからおれ達の技の名前でも考えようぜ｣ ｢何を急に｣ ｢公式で決まる前のお遊びってやつだ｣ ｢そういうメタ的発言をするな｣ [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>　キッドとキラーが互いの技の名前を考える話を書きました。</p>
<p>　セリフのみでほんとに短い小ネタ。</p>
<p>｢暇だからおれ達の技の名前でも考えようぜ｣<br />
｢何を急に｣<br />
｢公式で決まる前のお遊びってやつだ｣<br />
｢そういうメタ的発言をするな｣<br />
｢じゃあ手始めに、おれが腕に金属を集める技の名前を考えてみろ｣<br />
｢あれか……。｣</p>
<p>
ウルトラスーパーアルティメットデストロイアーム</p>
<p>
｢というのはどうだ｣<br />
｢お前……自分とこの船長が戦闘中こんなセリフ叫んで平気なのか？｣<br />
｢ぴったりだと思うが……｣<br />
｢小学生の考えるさいきょうのひっさつわざって感じだな｣<br />
｢デストロイとアームを併せてデストロイヤーとも読めるところがポイントだ｣<br />
｢そういうちょっと小賢しいところが尚更ガキくせぇ｣<br />
｢キッドはおれの曲刀を回転させて攻撃する技の名前でも考えろ｣<br />
｢よし、思いついたぜ！｣</p>
<p>
キル・キル・キル<br />
　　再惨再死</p>
<p>
｢どうだ｣<br />
｢中学２年生かお前は！｣<br />
｢再三再四って言葉があるだろ、あれをもじって回転する刃によるダメージをキルを３回重ねることで表｣<br />
｢説明しないでくれ！むずむずする！｣<br />
｢デストロイアームを棚に上げんなよ。次、リペルの別名｣<br />
｢別名……｣</p>
<p>
ウルトラスーパーアルティメットリペル</p>
<p>
｢お前の語彙が乏しいのはよくわかった｣<br />
｢うるさい。海賊にネーミングセンスはいらんだろ｣<br />
｢それにしてもひでぇ｣<br />
｢じゃあもう『親と社会への反発～青春の光と闇～』にしとけ｣<br />
｢何つーNHKドキュメントだよ！お前の技なんてまとめて『１３日の金曜日』で十分だぜ！｣<br />
｢だからチェーンソーを使う殺人鬼はジェイソンじゃなくてレザーフェイスだって言ってるだろうが！謝れババ・ソーヤーに！｣<br />
｢知るか！この『芝刈りコプター』！｣<br />
｢『寄せ集めアタック』！｣<br />
｢『よくペンションの天井についてる扇風機みたいな攻撃』！｣<br />
｢『鉄男オマージュ』！｣<br />
｢頭達は何をしてるんだ？｣<br />
｢絶対に付けたくない技名を考えてるらしいぜ｣</p>
<p>
………</p>
<p>
　小学生と中学生２年生の皆様申し訳ございません。</p>
<p>
　アメコミのジェイソンVSレザーフェイスは実にいい話だったなあ。<br />
　しかし、何故私の書くキッドとキラーはこんなにも暇そうなのだろうか。</p>
]]></content:encoded>
			<wfw:commentRss>http://rakugaga.wwww.jp/?feed=rss2&#038;p=46</wfw:commentRss>
		<slash:comments>0</slash:comments>
		</item>
		<item>
		<title>抜けない。/キッド＆キラー小話</title>
		<link>http://rakugaga.wwww.jp/?p=30</link>
		<comments>http://rakugaga.wwww.jp/?p=30#comments</comments>
		<pubDate>Sat, 12 Sep 2009 09:46:03 +0000</pubDate>
		<dc:creator><![CDATA[エビコ]]></dc:creator>
				<category><![CDATA[BLOG]]></category>
		<category><![CDATA[SS]]></category>

		<guid isPermaLink="false">http://rakugaga.wwww.jp/?p=30</guid>
		<description><![CDATA[　珍しく文章ネタです。 　漫画にしようか文章にしようか迷っていたもの。 　暇だったばっかりに、キッドもキラーも可哀相な目に遭うお話です。ボニーちゃんも出てきます。網タイツも不穏な発言をします。 　実は、以前携帯サイトをや [&#8230;]]]></description>
				<content:encoded><![CDATA[<p>　珍しく文章ネタです。<br />
　漫画にしようか文章にしようか迷っていたもの。</p>
<p></p>
<p>　暇だったばっかりに、キッドもキラーも可哀相な目に遭うお話です。ボニーちゃんも出てきます。網タイツも不穏な発言をします。</p>
<p></p>
<p>　実は、以前携帯サイトをやっていた時頂いた、｢キッドがキラーの仮面を脱がそうとする｣というシチュエーションのリクエストをどんなものにするかなかなか思いつかなくて、やっと出てきたのがこれです。直接仮面を脱がそうとする、という表現にはなりませんでしたが……。</p>
<p>　もう見てらっしゃらないかと思いますが、ようやくできました。遅くなって本当に申し訳ございません。</p>
<p></p>
<p>　キッド一味がシャボンディ諸島に停泊して、数日が経った。</p>
<p></p>
<p>　しばしば海軍や賞金稼ぎとの小競り合いはあるものの、現在島で最高額の懸賞金を誇るキャプテン・キッドに向かってくる者はそうはいない。むしろ、暇潰しにこちらから喧嘩を売りに行く程だ。海軍の膝元という場所柄もあり、それまでの航海に比べれば、実に平和なひと時を過ごしていた。</p>
<p></p>
<p>　しかし、平和であるがゆえに起こり得る事件もあるということを、キッドは身を以って知ることになる。</p>
<p></p>
<p>　キッド達は軽く昼食を済ませた後、街角で休息を取っていた。</p>
<p></p>
<p>｢早くコーティングが終わるといいんだがな｣</p>
<p></p>
<p>　この諸島がそう退屈なわけではなかったが、これから飛び込む新世界に想いを馳せる時、コーティングの完了する数日すらキッドには惜しく感じられた。横でしゃがんでいるキラーが無言の相槌を打つ。キラーもまた、沸き立つ戦意を持て余しているように思えた。</p>
<p></p>
<p>　キッドはふと、キラーの仮面に並んだ穴に目を留めた。</p>
<p></p>
<p>｢お前の仮面ってボウリング玉に似てるよな。投げられそうだ｣</p>
<p></p>
<p>　本当に右手の指を３本突っ込み、それらしく投げる真似をする。ボウリング玉にしては、少々大きいが、その曲線は掌に馴染むものだった。内部で曲げた指がキラーの頭頂部に触れている。このまま投げたら相当飛距離が稼げそうだった。</p>
<p></p>
<p>｢抜けなくなるぞ｣</p>
<p></p>
<p>　キラーは呆れたように言う。軽く身じろぎするが、特にこの状況に抗う気はなさそうだった。暇過ぎて、どうでもいいようだった。</p>
<p></p>
<p>｢ハハ、そうだな｣</p>
<p></p>
<p>　キッドも自身の行為の下らなさに興を削がれ、指を抜こうとした。</p>
<p></p>
<p>　抜こうとした。</p>
<p></p>
<p> 抜けなかった。</p>
<p></p>
<p> キッドは自分の親指と中指と薬指を見つめた。何かの間違いだ、と思いたかった。改めて手に力を入れ、引き抜こうとした。しかし、第二関節から先が見えることはない。<br />
 試しに思い切り指を捻るが、皮膚がよじれるだけで、びくともしない。これなら、と仮面の内部で曲げていた指を目茶苦茶に動かしてみたが、中でキラーの毛髪が乱れるだけだった。</p>
<p></p>
<p> 何故か己の頭部が掻きむしられているので、キラーは流石に苛立ってきた。</p>
<p></p>
<p>｢何をしているんだ、お前は｣</p>
<p>｢……｣</p>
<p></p>
<p> キッドとキラーの周りを船員達が囲む。</p>
<p></p>
<p>｢うわァ……｣</p>
<p></p>
<p>｢こいつァ何とも……｣</p>
<p></p>
<p>　誰しもが声にならぬ声を漏らし、ニュアンスを測りかねる溜息を吐いた。この状況を笑おうにも笑えない、呆れるにも呆れられない、奇妙な脱力感がキッド一味を覆っていた。仮に笑われても、キッドもキラーも怒るに怒れなかっただろう。</p>
<p></p>
<p>　本当に間抜けだった。</p>
<p></p>
<p>　丁度キッドの親指がキラーの顔の真正面に位置しているため、キラーは立ち上がることができなかった。また、キッドも腕が引っ張られるので微妙に中腰にならざるをえなかった。さながら仮装大賞でボウラー役をする人とボウリング玉役をする人、といった風情である。今まさに投げんとす状態のそれだ。そんな状態で移動をする姿の愉快さは言うまでもない。</p>
<p></p>
<p>　キッドは指先にちくちくとキラーの毛髪が刺さるのを感じていた。キラーは怒ると毛が逆立つということを学んだ。</p>
<p></p>
<p>　船員達は可哀相な船長達の姿が道行く人々から隠れるように物影に誘導した。そして、状況の打開策を話し合いにかかる。</p>
<p></p>
<p>｢石鹸流してみたら取れねえかな｣</p>
<p>｢イケそうだが、オチが見えるぞ｣</p>
<p>｢仮面を外してみたらどうだ？｣</p>
<p>｢駄目だ、頭の手が蝶番を跨いでる。指の関節を外せば取れるかもしれないが……｣</p>
<p></p>
<p>｢絶対やめろ！｣</p>
<p></p>
<p>　船長とその右腕は、綺麗にユニゾンした。キッドにしても、キラーにしても、どちらかが不幸にならなければ指が抜けることはなさそうだった。</p>
<p></p>
<p>　じっと考え込んでいたキッドが、顔を上げた。</p>
<p></p>
<p>｢リペルで取れねェかな｣</p>
<p></p>
<p>　キラーの仮面は金属でできている。磁力で勢いよく反発させれば、抜けるかもしれない。キラーも頷いた。</p>
<p></p>
<p>｢周りに危険物が無いところでやってくれ｣</p>
<p></p>
<p>　幸い背後は空き地であったため、キラーが吹き飛んでも受け身は容易にとれそうだった。<br />
　キッドは右手に力を集中させる。キラーは衝撃を予期して身構えた。船員達も、これでカタがつけば、と期待を込めて見守っている。</p>
<p></p>
<p>｢いくぞ。リぺッ……！｣</p>
<p></p>
<p>　次の瞬間、キッドの声にならない叫びが辺りに響いた。</p>
<p></p>
<p>｢……キッド……頭の上で嫌な音が聞こえた｣</p>
<p></p>
<p>　実際に響いたのは、キッドの指の骨が折れんばかりに軋む音だった。どうやら射出角度を間違えたらしい。キッドはしばし予想外の痛みに悶絶していたが、はっと目を見開いた。</p>
<p></p>
<p>｢待てよ…これを応用すれば、おれの腕の攻撃から更にキラーの斬撃が飛び出すという二段構えの技に…｣</p>
<p></p>
<p>｢おれを必殺技に組み込むな！｣</p>
<p></p>
<p>　その時、先程まで沈黙を守っていた網タイツが口を開いた。</p>
<p></p>
<p>｢大丈夫だ……そのうち……頭の指が鬱血して……腐れ落ちる……｣</p>
<p></p>
<p>｢……｣</p>
<p></p>
<p>　すかさず横にいたドレッド頭が網タイツの側頭部を張り倒した。</p>
<p></p>
<p>｢キラー！『それもアリだな』みたいな沈黙はやめろ！！｣</p>
<p>｢馬鹿言え!おれだって目の前に腐肉ぶら下げて生活したくないわ！｣</p>
<p>｢ずっと犬みてェに歩く羽目になるよりマシだって思っただろうが！｣</p>
<p>｢元はといえばお前が蒔いた種だ！｣</p>
<p></p>
<p>　まさかの爆弾投下に、キッドもキラーも騒然とした。抜けなくなるのではという不安が、長年共に歩んできたふたりの間に亀裂を生もうとしていた。船員達も余裕の無いふたりをほとんど目にしたことが無かったので、焦りを隠せない。</p>
<p></p>
<p>　とはいえ、こんな下らないことで決裂するほど、キッドとキラーは子どもではなかった。</p>
<p></p>
<p>｢キッド｣</p>
<p>｢……なんだよ｣</p>
<p></p>
<p>　キラーが神妙に喋りかけてきたので、キッドも冷静さを取り戻した。</p>
<p></p>
<p>｢赤髪のシャンクスを知っているだろう。赤髪は片腕を失っているが、四皇として名を馳せている｣</p>
<p></p>
<p>　キッドは黙って眼下のキラーを見つめた。</p>
<p></p>
<p>｢つまり指の2本や3本無くてもお前なら海賊王になれる!おれはキッドを信じてるぞ！｣</p>
<p>｢アホ－－！！そんな理由で指詰めてたまるか！構えるな武器を！｣</p>
<p></p>
<p>｢……で、アタシのところに来たってか？３億越えが？｣</p>
<p>｢おう……｣</p>
<p></p>
<p>　不毛な言い合いを経て、本当に真面目に解決策を考えた結果辿り着いた答えは、南の海の”大食らい”ジュエリー・ボニーを訪ねることだった。</p>
<p></p>
<p>｢いや、ホントありえねぇ……お前らパねぇわ｣</p>
<p>｢おう……｣</p>
<p>　伝聞に因ると、ボニーは人間を若返らせたり老いさせたりできる能力者らしい。ならば、その年齢操作で一時キッドを子どもにすれば、容易に指を抜くことができると考えたのである。</p>
<p></p>
<p>　しかし、何しろ同業者は基本的に敵である。どう依頼をするかがネックだった。２億近く懸賞金に差のある、悪名高い海賊を前にしても怯む様子もないし(今の有様を考えれば当然だが)、同郷のよしみ、で通用するほど海賊は甘くない。</p>
<p></p>
<p>　あとは謝礼を積むしかないのだが、果たしてこの女海賊は応じるだろうか。</p>
<p></p>
<p>｢で、やってくれるか？｣</p>
<p></p>
<p>　舐められたくないのと、ボニーの機嫌を損ねないようにしたいのとで、キッドのストレスは最高潮に達していた。人に頭を下げることはプライドにもとる行為だ。キラーの方は姿勢の都合で、ずっと頭を下げっぱなしだが。</p>
<p></p>
<p>　ボニーは手にしたりんごを丸ごと口に放り込み、咀嚼しながら言った。</p>
<p></p>
<p>｢海賊は人助けなんかしませーん｣</p>
<p></p>
<p>　大変適当な返事だった。</p>
<p></p>
<p>｢人が下手に出てればてめぇ！この無駄飯食らい！｣</p>
<p></p>
<p>　キッドが下手に出ていられる時間は短かった。本気で凄んだキッドの前で平静でいられる者はそう多くないが、ボウラー役の今は徒に面白さを強調するのみである。</p>
<p></p>
<p>｢つか、アタシがアンタをコドモにするより、死の外科医とかいう奴に斬ってもらった方が早いんじゃねーの？｣</p>
<p>｢そいつは色々ヤバい噂を聞いてる｣</p>
<p></p>
<p>　人間をバラバラにしてバラバラに接合する能力、というのはあまり気持ちのいいものではない。二つ名や、風評を鑑みれば余計に頼みたくない。</p>
<p></p>
<p>｢ふーん｣</p>
<p>｢というわけで｣</p>
<p>｢さようなら｣</p>
<p>｢くっ……｣</p>
<p></p>
<p>　にべもないボニーに殺意が沸くも、実力行使に出たところで意味は無い。ボニーは話は終わったと言わんばかりに、むしゃむしゃとピザを詰め込みにかかっていた。</p>
<p></p>
<p>　すると、キラーが小声でキッドに囁いた。</p>
<p></p>
<p>(キッド、大食らいなら食べ物で釣れるんじゃないか？)</p>
<p>(そうだな。ピザ50枚…いや、大食らい基準か)</p>
<p></p>
<p>　一応交渉に際して、具体的な謝礼金額は提示したのだが、一蹴されていた。大食らいに対しては、現金より食べ物の方が有効かもしれない。</p>
<p></p>
<p>｢ピザ100枚でどうだ！｣</p>
<p></p>
<p>　ボニーはキッドを見た。明らかに興味を示している。しめた、とキッドとキラーは思った。</p>
<p></p>
<p>｢……ゼロがひとつ足りないんじゃねぇの？｣</p>
<p>｢何ィ？！｣</p>
<p>｢くそッ…こんなに虚しくなる金の遣い方があったとはな…｣</p>
<p>｢さすが３億超えは気前がいいな！｣</p>
<p>　レッドラインを彷彿とさせる程に積まれたピザを前に、キッドは肩を落とし、ボニーは涎を輝かせた。１度に１０００枚は用意できないので、ピザの代金以外にピザ職人を10人も雇う必要があった。今日１日ならこれで持つな、という衝撃発言は聞かなかったことにした。</p>
<p></p>
<p>　今更ながら、医者に行けば良かったかもしれないと思えてくる。無論外科医ではなく。</p>
<p></p>
<p>｢早いとこやってくれ｣</p>
<p>｢ハイハイ｣</p>
<p></p>
<p>　予想外に散財してしまったが、背に腹は代えられない。新世界に入ったら、敵船から奪えばいいだけの話だ。海賊王になった暁には、笑い話のひとつ位語られても構わないだろう。</p>
<p></p>
<p>　その時、ようやく立ち上がれる、と安心したキラーが頭を振った。</p>
<p></p>
<p>　すぽん、という小気味いい音がした。キラーはキッドを見上げた。キッドは大人のままだった。</p>
<p></p>
<p>　今度はボニーを見た。腹を抱えてピザを頬張りながら器用に笑い転げていた。</p>
<p></p>
<p>　もう一度キッドを見上げた。</p>
<p></p>
<p>｢……｣</p>
<p>｢……｣</p>
<p></p>
<p>｢ごちそうさん！｣</p>
<p>　これを書くのに、ちょっとボウリングについて調べました。なんと紀元前5000年頃のエジプトでも行われていたという由緒正しきスポーツなんですね。当時はスポーツではなかったようですが。</p>
<p>
　”もともとボウリングは倒すピンを災いや悪魔に見立てて、それを沢山倒すことが出来たならば、その災いなどから逃れることが出来るという一種の宗教儀式であった。”</p>
<p></p>
<p>　というwikiの記述も興味深い。この一節を見て、”ホーキンスがボウリング状態のキッドとキラーを目撃し、｢悪魔に似た者達よ、お前達は玉ではなくむしろピンだ｣とか言ってピン＝釘で串刺しにして、ピンに見立てようと襲ってくる”みたいな場面も考えました。怖いのでやめました。</p>
<p></p>
<p>　ここまで読んで下さってありがとうございました。</p>
<p></p>
]]></content:encoded>
			<wfw:commentRss>http://rakugaga.wwww.jp/?feed=rss2&#038;p=30</wfw:commentRss>
		<slash:comments>0</slash:comments>
		</item>
	</channel>
</rss>
